やぶれ&かぶれ

ぼろぼろの人が主に職場で書く日記

体調不良と再生

体調を崩した。

 

少し前の土曜日、昼間から何となくだるかったが、出産してからというもの毎日例外なくだるいので暑さのせいかと思っていた。しかし、土曜夜恒例の家族が寝静まってからの酒タイム。どうにも酒がすすまないのである。おまけに目の奥が何となく熱い。まさかと思い熱を測ると37.5℃。ウッ…。多分部屋が暑いせいだ…と誤魔化しながら寝た。

翌日も微熱があり、加えて下痢と倦怠感があったので一日寝ていた。この時期に体調不良となると当然コロナでは…?という疑念が自然発生してくる。自分の症状で検索しまくったが、コロナウイルス感染時の症状は非常に多様であり、あてはまっているといえばあてはまっているし、違っているといえば違っている。不安ゆえの検索なのだが、安心材料になることは決してなく、今思えば全く無駄な時間だった。

とにかく不安だった。

もし私がコロナだったら、子供は学校でいじめられはしないだろうか。

もし私がホテル療養や入院となったら必要なものは何だろうか。

とりあえず今の寝間着がダサすぎる(母親からもらった蛍光イエローのフジテレビのTシャツとムーミン柄の紫のリラコ)ので少なくとも何かパジャマを買わなくてはならない…。

 

そんなことをしているうちにあっという間に夕方。何か飲もうとリビングに行くとざわざわと鳥肌が立つ。「なんかエアコンきつくない?」と家族に話しているうちにどんどん寒くなり、5分ぐらいで歯がガチガチいうほど震えてきた。 これが噂に聞く悪寒というものでは…?あっという間に熱が39℃になり、これはコロナもあれだが普通にしんどいので何とかしたいと思い明日受診出来そうな病院をネットで探した。

 

次の日も朝から38℃あった。とりあえずコロナか否かは決着を付けたいので医者に何と言われても食い下がってPCR検査をしてもらおうという強い意志を持ち、近くの病院の発熱外来を受診する。熱がある人は裏にある救急受付から入るよう事前に言われていたのでそのようにしたら待合室は人で一杯だった。普段なら密!怖い怖い!と退散必至の人口密度であったがこの時点で自分は8割方コロナだと思っていたのでどんと来いの心境であった。受付時に体温を測ると39.2℃。いいぞ。いや、全然よくないのだが、熱が高い方が確実にPCR検査を受けられると思ったのでもっといけ体温、という感じである。待っているとあちこちでPCR検査は明日この時間に駐車場の所に来てください、というようなことを言われている患者がいた。今日は検査してくれないのか、と思ったが、巷でよく聞く「具合が悪くてもPCR検査をしてもらえない」というような噂は私が受診した病院においては違っているなと感じた。

 

そしていよいよ診察室に呼ばれた。受付時に書いた問診票を見て「咳や喉の痛みはないのですか?」と聞かれた。「無いです。下痢と熱がひどいです。」と言うとベッドに寝るよう促されお腹を押されて触診をされた。その時、押された下腹がぐっと痛んだのでその旨訴えると「腸炎ですね」と医者。断定めいた言い方に面食らい、「コロナじゃないんですか?」と食い下がると「咳や喉の痛み、味覚・嗅覚障害が無いのでコロナではないと思います。内科に回ってください。」と清々しいまでにコロナを否定し、テキパキと内科受診の段取りをしてくれた。待合室の様子を見た限りではPCR検査を渋っている診療体制には見えなかったので、その中で検査が不要と判断された私は本当にコロナウイルス感染の線はほぼ無いのだと思った。

 

内科では検査でめでたく?細菌感染症であると診断され、抗生物質をもらい帰宅した。

抗生物質の効き目はすばらしく、次の日には熱も下がった。しかし、下痢がひどく食欲が全くない。外食時には味や値段もさることながら「量が足りなくはないか?」ということをひどく気にするこの私が、全く食べ物を受け付けなくなったので自分でもビックリであった。ポカリばかり飲んでいたのでしょっぱいものが食べたい…とチップスターをたった2枚食べたのだがそれだけで「今!胃に良くないものが入りましたー!!!」と言わんばかりに身体が反応して吐き気と冷や汗がドワーっと出るのである。どうなっちゃったんだ。もう離乳食しか食べられないのではないか…?洋画で「ママの腹から出直して来な!」的なセリフがありそうだが、今の私は「離乳食からやり直して来な!」状態であり、その言葉にも「はいそうします…。」と全面的に受け入れるしかない。

私の消化機能は完全に赤ちゃんになった。1歳児の方が私よりまだ食べられるだろう。絶望の中、それでもゼリー少し、アイス少し、味噌汁などからはじめて少しずつ固形分を取るようになった。離乳食のステップを体調の回復とともに三日ほどで修了し、普段の生活が戻ってきた。

 

体調が回復すると、いつもの通勤や買い物の時の風景、コンビニに並ぶアイスやスイーツが輝いて見えた。離乳食からやり直して、わたしは生まれ変わったのかもしれない。少しでも長くこの新しい世界を見ていたい。

そう思ったが、日常は思った以上のスピードでまた私を飲み込み、職場近くの中華屋の脂っこい500円弁当を掻き込む日々があっという間に戻ってきた。そして、「いったんゼロになった」唯一の証であった減った体重も元に戻り、全てが幻のように思えた。

 

しかしそれでも、「いつ入院してもいいようにせめて人に見せられるパジャマにしておかなければいけない」という学びは確かのものとして私の心に残っていたのだった。