やぶれ&かぶれ

ぼろぼろの人が主に職場で書く日記

センチメンタルバスの大太鼓をいやらしい目で見ていた

好きな食べ物の話になった時に「寿司」や「焼肉」みたいなみんな大好き!的なやつよりも、「ごちそうというわけじゃないけどお店にあるとつい買っちゃうんだよな~」みたいな食べ物について聞けるとうれしくなる。具体的で細分的になるほどその人自身の好みが浮き上がってくるような気がするからだ。

それは好みのタイプの人についての話も同じだ。佐藤健山崎賢人がかっこいいのはわかる。寿司や焼肉だ。でも、ないだろうか?特別に容姿端麗というわけではないがすごく刺さるという人が。昔、会社の人と飲んでいた時に「卓球の石川佳純のルックスがめちゃくちゃタイプ」と話していた人がいたがまさにこの感じ。

 

聞かれていないのに勝手に言いますが私の好みの男性は長谷川博己です。誰が見ても大概カッコいいと思われるのでこれは寿司・焼肉カテゴリです。でも、別にカッコよくないけど何かタイプだわ~と思って見ている人がいる。かまいたちの濱家である。そしてふと思い返してみるとこういう人がちょくちょく現れているような気がする。思い出す。夏。39度の、とろけそうな日…。20年以上前のことだ。そうだ私はセンチメンタルバスの大太鼓の人が好きだった。皆さんセンチメンタルバスのことをご存じだろうか。アフロのボーカルの女の子と何だかよくわからない男性の二人組の音楽ユニットで、「39度の!とろけそうな日!」と歌う曲がポカリスエットだかカルピスウォーターだかの清涼飲料水のCMに使われていて、当時は結構ヒットしていたのだ。メンバーの男性は作曲などを担当していたのだと思うが、その曲ではなぜか大太鼓をガンガン叩いており、HEY!HEY!HEY!でもそれをダウンタウンにいじられていたような記憶がある。他の曲ではギターとかを弾いていたのかもしれないがいわゆる一発屋だったのでよくわからない。なのでその人は「センチメンタルバスの大太鼓」なのである。たまのランニング、ゆずのタンバリン、センチメンタルバスの大太鼓。ひょろっとした体格で、顔もそれといった特徴はない。友達がGLAYラルクに熱を上げていた時、私はひっそりとセンチメンタルバスの大太鼓に好意をよせていた。はっきり言ってかっこよくないので誰にも言えなかった。

何が良かったのだろう…。今になってあらためて考えてみる。かまいたち濱家、センチメンタルバスの大太鼓…。細身で背が高い人が好きというのはあるかもしれない。あとは何だ?顔。顔に何かある気がするのだ。

しばらく考えて私は気がついてしまった。歯がガタガタの人である。答え合わせのように今まで何となく好意を持った人の顔を思い出した。荻原次晴、中学の時の塾の先生、クドカン…。歯がガタガタの人ばかりではないか。こんな年齢になって、恋愛だのなんだのからは完全に引退した今になって好みの男性のタイプが明確に言語化されてしまった。「なんかわからないけどなんかいい」のぼんやりした所が急にめちゃくちゃハッキリし、そのビビッドさに頭をガンと殴られたようだ。

しかし少し寂しい所もある。ガタガタの歯は永遠ではないのだ。歯並びが悪いということは一般として欠点で、白く美しい歯並びに整えることは人前に出る仕事をしている人にとっては身だしなみとも言える。

かまいたちも歯をきれいにしてしまった。多分次晴もきれいにした。お金がないわけでもなかろうし、当然のことなのだ。それでもやはり自分が「ガタガタの歯の男性が好き」と気づいてしまったからにはどこか寂しい。

 

センチメンタルバスの大太鼓はどうしただろう。あの夏以来姿を見ていないけれど、歯を治したのだろうか。それぐらいのお金を何らかの形であの後も稼げているならいいな、と思いながら白く美しい歯を見せて笑うセンチメンタルバスの大太鼓の顔を想像し、やっぱり何か違うな~と思う春なのだった。